マタイの福音書 26:47-68 JCB

マタイの福音書 26:47-68

イエスがまだ言い終わらないうちに、十二弟子の一人ユダがやって来ました。彼といっしょに、ユダヤ人の指導者たちが差し向けた大ぜいの群衆も、手に手に剣やこん棒を持っていました。 彼らの間では、ユダがあいさつする相手こそイエスだから、その人物を捕まえるように、前もって打ち合わせがしてありました。 それで、ユダはまっすぐイエスのほうへ歩み寄り、「先生。こんばんは」と声をかけ、さも親しげにイエスを抱きしめました。

イエスが、「ユダよ。さあ、おまえのしようとしていることをしなさい」と言われた瞬間、人々は飛びかかり、イエスを捕らえました。

その時、イエスといっしょにいた一人が、さっと剣を抜き放つと、大祭司の部下の耳を切り落としました。

ところが、イエスは彼を制して言われました。「剣をさやに納めなさい。剣を使う者は、自分もまた剣で殺されるのです。 わからないのですか。わたしが願いさえすれば、父が何万という天使を送って、わたしを守ってくださるのです。 しかし、もし今そんなことをしたら、こうなると書いてある聖書のことばが実現しないではありませんか。」

そして今度は、群衆に向かって言われました。「剣やこん棒で、これほどものものしく武装しなければならないほど、わたしは凶悪犯なのでしょうか。わたしが毎日神殿で教えていた時には、何の手出しもしなかったではありませんか。 いいですか、こうなったのはすべて、預言者たちのことばが実現するためです。」

この時、弟子たちはみな、イエスを見捨てて逃げ去りました。

暴徒たちは、イエスを大祭司カヤパの家に引っ立てました。ちょうど、ユダヤ人の指導者たちが一堂に集まり、今や遅しと待ちかまえているところでした。 一方、ペテロは遠くからあとをつけて行き、大祭司の家の中庭にもぐり込みました。そして兵士たちにまじって、イエスがどんなことになるのか見届けようとしました。

そこには、祭司長たちやユダヤの最高議会の全議員が集まり、なんとかイエスを死刑にしようと、偽証する者を捜していました。

ところが、偽証する者は多かったのですが、その証言がみな食い違っているのです。そうこうするうちに、ようやく、格好の証人が現れました。二人の男が進み出て、 「この男は、『神殿を打ちこわして、三日の間に建て直すことができる』と言っていました」と証言したのです。

大祭司はここぞとばかりに立ち上がり、イエスに問いただしました。「さあ、黙っていないで答えたらどうだ。ほんとうにそんなことを言ったのか。それとも言わなかったのか。」 それでもなお、イエスは黙っていました。大祭司は続けました。「生ける神の御名によって命じる。あなたは神の子キリストなのかどうか。さあ、はっきり答えてみなさい。」

イエスはお答えになりました。「あなたの言ったとおりです。あなたがたは、やがてメシヤ(救い主)のわたしが、神の右の座につき、雲に乗って来るのを見るでしょう。」

これを聞いた大祭司は、即座に着物を引き裂き、大声で叫びました。「冒瀆だ! 神を汚すことばだ! これだけ聞けば十分だ。さあ、みんなも聞いたとおりだ。 この男をどうしよう。」

一同はいっせいに叫びました。「死刑だ、死刑にしろ!」

そうして、イエスの顔につばをかけたり、なぐったりしました。またある者は、イエスを平手で打ち、 「おい、キリストなんだろ。当ててみろ。今おまえを打ったのはだれだ」とからかいました。

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