ヨブ 記 1:1-22, ヨブ 記 2:1-13, ヨブ 記 3:1-26 JCB

ヨブ 記 1:1-22

1

プロローグ

ウツの国にヨブという人が住んでいました。ヨブは人格者で、神を敬い、悪から遠ざかって生活していました。 彼は子だくさんで、息子が七人、娘が三人もいました。それに、羊七千頭、らくだ三千頭、牛五百くびき、雌ろば五百頭がいる上に、大ぜいの召使をかかえていました。名実ともに、その地方きっての資産家だったのです。

毎年、ヨブの息子たちは、お互いの誕生日ごとに、兄弟姉妹を自宅に招いて祝いました。 その誕生パーティーが一通り終わると、ヨブは決まって子どもたちを呼び寄せ、彼らの身をきよめる儀式を行いました。ヨブは朝早く起き、子どもたち一人一人のために、焼き尽くすいけにえをささげるのです。ヨブは口ぐせのように、「息子たちが、もしかしたら罪を犯し、心の中で神に背いたかもしれない」と言っていたからで、彼はいつもそのようにしていました。

ある日、御使いたちが主の前に出た時のことです。その中に、告発者のサタンもいました。 主はサタンに聞きました。「おまえはどこから来たのか。」「地上を歩き回って、いろいろと見てきたところです。」 「わたしのしもべヨブを知っているか。彼は世界で一番の人格者で、神を敬い、一点の非の打ちどころもない人物だ。」 「それは当然です。あなたが特別に心にかけているのだから。 あなたはいつも、ヨブとその家庭、持ち物を守り、ヨブのすることは何でも栄えるように目をかけています。これでは、金がうなるほどあっても不思議はありません。あなたを拝むふりをして当然です。 一度ヨブの財産を取り上げてみたら、きっとヨブはあなたをのろうでしょう。」 「では、ヨブの財産のことは、おまえの好きなようにしてよい。ただ、ヨブの体に触れてはならない。」

こうして、サタンは出て行きました。それからしばらくして、ヨブの息子、娘たちが長兄の家で祝宴を張っている時、悲劇の幕が切って落とされました。

使者がヨブの家に飛んで来て、悲報を伝えたのです。「大変です! 牛が畑を耕し、そばでろばが草を食べているところへ、いきなりシェバ人が襲いかかりました。家畜はさらわれ、労働者たちは皆殺しです。どうにか助かったのは私一人です。」

彼の話がまだ終わらないうちに、別の使いが、いっそう悪い知らせを伝えました。「恐ろしいことです。神の火が天から下って、羊と牧童を残らず焼き殺しました。難を免れたのは私だけです。」

この男が報告し終えないうちに、もう一人の使者が息せき切って駆け込んで来ました。「だんな様! 三組のカルデヤ人の野盗がらくだを奪い、召使たちを殺しました。私一人が、何とか逃げて来たのです。」

彼がなおも話している間に、さらにもう一人が駆けつけました。「お子さんたちが大変です。皆さん、ご長男の家で宴会を開いておいででした。 すると突然、砂漠の方から大風が吹きつけて、家を直撃したのです。それで屋根が落ち、その下敷きになって、皆さんお亡くなりに……。私だけが、どうにか命拾いをしました。」

この時ヨブは立ち上がり、悲しみのあまり上着を引き裂き、地にひれ伏して、 神に言いました。

「生まれてきた時、私は裸でした。

死ぬ時も、何一つ持って行けません。

私の持ち物は全部、主が下さったものです。

ですから、主はそれを取り上げる権利もお持ちです。

いつでも、どんなときでも、

主の御名がたたえられますように。」

このような事態になっても、ヨブは罪を犯したり、神を悪しざまに言ったりしませんでした。

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ヨブ 記 2:1-13

2

このことがあったあと、御使いたちが再び主の前に出た時、サタンも同席していました。 主はサタンに聞きました。「おまえはどこから来たのか。」「地上を歩き回って、いろいろと見てきたところです。」 「そうか。おまえは、わたしのしもべヨブの態度を見たか。ヨブは世界で一番の人格者だ。神を敬い、いっさいの悪から遠ざかっている。おまえは、わたしをそそのかして、理由もないのに彼に危害を加えた。ところが、あの信仰深さはどうだろう。」 「いのちが助かるためなら、人はどんなことでもするものです。今度は病気にしてみればいい。ヨブはきっと、面と向かってあなたをのろうでしょう。」 「気のすむようにするがいい。ただし、ヨブのいのちだけは取ってはならない。」

こうして主の前から引き下がったサタンは、ヨブを頭のてっぺんから足の裏まで悪性の腫れ物だらけにして攻め立てました。 ヨブは土器のかけらで体中をかきむしり、灰の上に座り込みました。 それを見て、妻がそそのかしました。「こんなひどい仕打ちをされても、まだ神を大切にするのですか。いっそ、神をのろって死んでしまったほうがいいのではないかしら。」 「まるで、神を知らない外国の女のような口をきくのだな。神から祝福ばかり頂いて、災いはお断わりなどという都合のいい話があるだろうか。」ヨブは、このようになってもなお、神を冒瀆するようなことは、いっさい口にしませんでした。

さて、ヨブの身に災難が降りかかったことを知った友人たちが三人、互いに打ち合わせをして、彼を慰め励まそうと、はるばる訪ねて来ました。この三人は、テマン人エリファズ、シュアハ人ビルダデ、ナアマ人ツォファルです。 彼らはヨブを見て、ただ、びっくりするばかりでした。顔形はすっかり変わり、見分けもつかないほどです。彼らはあまりの痛ましさに声を上げて泣き、めいめい上着を裂き、ちりを空中にまき散らし、頭に土をかぶって悲しみました。 それから、ヨブとともに七日七夜、地に座っていましたが、だれも黙ったままでした。ヨブの苦しみようがあまりひどいので、話しかけることもできなかったのです。

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ヨブ 記 3:1-26

3

ヨブのことば

ついにヨブは口を開き、自分の生まれた日をのろいました。

「ああ、なぜ私は生まれたのか。

こんなことなら、いっそ生まれないほうがよかった。

私が生まれた日など忘れ去られてしまえ。

神にさえ忘れられ、

永遠の暗闇に包まれてしまえばよいのだ。

そうだ、暗闇がその日を奪い、

黒雲が覆い隠すがよい。

その日が暦から消し去られ、

その日には何もなかったことになればよい。

その日の夜は荒れすさんだ、喜びのない夜となれ。

のろいの名人よ、その日をのろってくれ。

その夜は星も出るな。

その夜がどんなに光を待ちわびても

夜は明けることなく、

朝がくることがないように。

それはこの日が、

母が私を身ごもらせないようにできなかったから、

こんな災難に会うため、わざわざ生まれさせたからだ。

ああ、なぜ、私は生まれてすぐに死ななかったのか。

なぜ、産婆は私を生かしておき、

乳房をふくませて養い育てたのか。

生まれてすぐ死んでいたら、

今ごろ安らかに眠っていただろうに。

栄華を極めた大臣や王たち、

また城の中に財宝を積み上げた領主たちと

いっしょになっていただろうに。

呼吸もせず、陽の光を見ることもない

死産の子だったらよかったのだ。

死んでしまえば、悪い者ももう人に迷惑をかけず、

疲れきった者も休むことができる。

囚人も、残忍な看守から解放されて安らぎを得るのだ。

死んでしまえば、金持ちも貧しい人もない。

奴隷でさえ、自由の身となる。

なぜ、悲惨な境遇にある者に、

光といのちが与えられているのか。

彼らは死にたくても死ねない。

人が食べ物や金品のことで目の色を変えるように、

ひたすら死を求めているのに。

思いどおり死ねたら、彼らはどんなに安らかだろう。

神の与えるものが無益と失意の人生だけだとしたら、

なぜ、神は人を生まれさせるのだろう。

私から出るのはため息ばかりで、

食事ものどを通らない。

うめき声は水のように止めどなくあふれている。

恐れていたことがついに起こったのだ。

ぬくぬくと遊び暮らしていたわけでもないのに、

災いが容赦なく降りかかったのだ。」

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