列王記Ⅱ 6:24-33, 列王記Ⅱ 7:1-20, 列王記Ⅱ 8:1-15 JCB

列王記Ⅱ 6:24-33

包囲されたサマリヤ

ところが、のちにシリヤ(アラム)のベン・ハダデ王は、全軍を召集してサマリヤを包囲しました。 そのため、サマリヤの町はひどい食糧難に見舞われたのです。包囲が長く続いたので、ろばの頭一つが銀八十シェケル(約一キログラム)、鳩の糞四分の一カブ(〇・三二リットル)が銀五シェケルで売られるほどになりました。

ある日、イスラエルの王が町囲みの城壁の上を歩いていると、一人の女が、「王様、お助けください」と叫び求めてきました。王は言いました。「主があなたを助けてくださらないなら、私に何ができよう。食べ物もぶどう酒もやることはできない。それで、いったいどうしたというのか。」

彼女は答えました。「実は、この女が私に、『今日はあなたの子どもを食べ、明日は私の子どもを食べましょう』と言ったのです。それで、二人して私の子どもを煮て食べました。次の日、私が、『さあ、今度はあなたの子どもの番よ』と言うと、この女は子どもを隠してしまったのです。」

王はあまりに悲惨な話に、王服を引き裂いて悲しみました。それを見ていた人々は、王が下に荒布をまとっているのを知りました。 王は誓って言いました。「今日、私がエリシャの首をはねないなら、神が私の首をはねてくださるように。」

イスラエルの王がエリシャを呼び出す使者を立てた時、エリシャは家の中に座って、イスラエルの長老たちと話し合っていました。ところが、使者が到着する前に、エリシャは長老たちにこう話しました。「あの人殺しが、私を殺そうと使者をよこしました。来ても、戸をしっかり閉め、中に入れてはいけません。本人がすぐあとからやって来るからです。」

彼がまだ話し終わらないうちに、使者が到着し、そのあとには王が続いていました。王は言いました。「主はこんなひどいことをなさった。もうこれ以上、主の助けなど期待できない。」

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列王記Ⅱ 7:1-20

7

エリシャは答えました。「いや、主はこうおっしゃっている。『明日の今ごろには、サマリヤの市場で、小麦粉一セア(七・六リットル)と大麦二セアが、それぞれ一シェケルで売られるようになる』と。」

これを聞いた王の侍従は、「たとえ主が天に窓をお作りになっても、そんなことが起こるはずはない」と言いました。そこでエリシャは言いました。「あなたは自分の目でその有様を見る。しかし、それを食べることはできない。」

包囲が解かれたサマリヤ

そのころ、町の門の外に四人のツァラアトに冒された人が座って、こう話し合っていました。「死ぬまで、ここにじっと座っていてもしかたない。 ここにいても飢え死にするだけだし、町に入っても同じことだ。それなら、いっそ出て行って、シリヤの陣営に投降しよう。助かればもうけものだし、殺されても、もともとだ。」

話がまとまり、夕方、そろってシリヤの陣営に行きましたが、驚いたことに、そこにはだれもいませんでした。 主がシリヤ軍に、戦車の向かって来る音と馬のいななき、大軍勢が攻め寄せる音を聞かせたからです。それで、彼らは口々に、「イスラエルの王がヘテ人やエジプト人を雇って攻めて来たに違いない!」と言い、 あわてふためいて、その夜のうちに、彼らの天幕も馬もろばも何もかも置き去りにして、いのちからがら逃げ出したのです。

ツァラアトに冒された人たちは陣営の端まで来ると、天幕を次から次へと回って食べたり飲んだりし、金や銀や衣服を持ち出して、それらを隠しました。 そうこうしているうち、彼らは互いに言いました。「こんなことをしていてはいけない。この良い知らせを、まだ、だれにも伝えていないではないか。明日の朝まで黙っていようものなら、きっと恐ろしい罰を受けるだろう。さあ、宮殿にいる人々に知らせよう。」

そこで四人は町に戻り、見張り人に、「シリヤ軍の陣営に行ってみると、人っ子ひとりおらず、馬やろばはつながれたままで、天幕もそっくりそのままだった」と報告しました。 見張り人は、大声でこの知らせを宮中の人々に伝えました。 王は起き上がると、家臣たちに言いました。「これは罠に違いない。シリヤ軍は、われわれが飢えているのを知って、わざと陣営をからにし、野に隠れているのだ。われわれをおびき出す作戦だ。うっかり出て行ったら、たちまち生け捕りにされ、町も占領されてしまうだろう。」

家臣の一人が答えました。「では、偵察を出して、様子を探らせてみてはいかがでしょう。残っている馬の中から、五頭だけ差し向けましょう。そのくらいなら、何が起ころうが、大した損失ではないでしょう。どうせここにいても、私たちとともに死ぬことになるのですから。」

そこで二台分の戦車用の馬が引き出され、王は敵陣偵察に二人の兵士を送りました。 彼らは大急ぎで、逃げたシリヤ軍のあとを追い、ヨルダン川まで行きましたが、道の至るところに衣服や武器がいっぱい捨ててあるではありませんか。彼らは帰って、このことを王に報告しました。

そうとわかると、サマリヤの人々は、われ先にシリヤ軍の陣営に殺到し、略奪をほしいままにしました。そのため主のことばどおり、その日のうちに、小麦粉一セアと大麦二セアが一シェケルで売られるようになったのです。 王は、「そんなことが起こるはずはない」と言ったあの侍従を、門の出入りの監視に当たらせました。ところが彼は、なだれのように殺到する人々に押し倒され、踏みつけられて、死んでしまいました。前の日、王がエリシャを捕らえに行った時、エリシャが語ったとおりでした。 預言者が王に、「明日になったら、小麦粉と大麦が安く売られるようになる」と言った時、 その侍従が、「たとえ主が天に窓をお作りになっても、そんなことが起こるはずはない」と答えたので、預言者は、「あなたは自分の目でそのようになるのを見るが、それを食べることはできない」と言ったのでした。 そのとおりのことが実現し、人々は門のところで彼を踏みつけ、殺してしまったのです。

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列王記Ⅱ 8:1-15

8

シュネムの女の家と畑

エリシャは、かつて子どもを生き返らせてやったあのシュネムの女に言いました。「家族を連れ、どこかほかの地に疎開しなさい。主がイスラエルに、七年間のききんを起こさせるからです。」

女は家族を連れてペリシテ人の地に移り、七年間そこに住みました。 ききんが終わるとイスラエルに戻り、自分の家と畑を返してくれるよう、王に願い出ました。 彼女が王のところに来た時、たまたま王は、エリシャのしもべゲハジと話している最中でした。王はゲハジに、「エリシャが行ったすばらしいことを聞かせてくれ」と頼んだのです。 ゲハジは、エリシャが子どもを生き返らせた時のことを話していました。ちょうどそこへ、その子どもの母親が入って来たのです。ゲハジは思わず叫びました。「王様! 今、その女がここにおります。先生が生き返らせたのは彼女の子です。」

王が、「確かに間違いないか」と尋ねると、彼女は、「そのとおりです」と答えました。そこで、王は家臣に命じました。「この女が所有していた物を、ぜんぶ返してやりなさい。留守の間の収穫に見合うだけの作物もだ。」

シリヤの王ベン・ハダデの死

そののち、エリシャはシリヤの首都ダマスコへ行きました。時に、シリヤの王ベン・ハダデ(二世)は病床に伏していましたが、「あのイスラエルの預言者が来た」と告げる者がありました。 それを聞いた王は、ハザエルに言いました。「その預言者に贈り物を持って行き、私の病気が治るかどうか、主に伺いを立ててもらってくれ。」

ハザエルは、贈り物として、土地の最上の産物をらくだ四十頭に載せて行き、エリシャに尋ねました。「ベン・ハダデ王が、病気が治るかどうか、お伺いを立ててほしいと申しております。」

「『治ります』と伝えなさい。しかし、主は私に、王はきっと死ぬと告げられた。」

そう言うとエリシャは、ハザエルが恥じ入るほどじっと彼の顔を見つめ、急に泣きだしました。

「先生、いったい、どうなさったのですか?」とハザエルが聞くと、エリシャは答えました。「あなたが、イスラエル人に恐ろしいことをしようとしているのがわかるのだ。あなたは要塞を焼き払い、若い男を殺し、赤ん坊を岩に投げつけ、妊婦の胎を切り裂くだろう。」

ハザエルは言いました。「ただ仕えるだけの飼い犬のような私が、そんな大それたことなどできるわけがありません。」しかし、エリシャは言いました。「いや、主は私に、あなたがシリヤの王になると示された。」

ハザエルが帰って来ると、彼の帰りを待ちかねていた王は尋ねました。「エリシャは何と申した。」彼は、「あなたは治ると申されました」と言いました。 ところが、翌日、ハザエルは水に浸した毛布を王の顔にかぶせて窒息死させ、自分が王に取って代わったのです。

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