エステル 記 2:19-23

モルデカイの功績

のちに、王がまた美人選びをしようとした時、モルデカイは政府の役人になっていました。 エステルはいまだに、ユダヤ人であることを隠し通していました。モルデカイの家にいた時と同じように、彼の言いつけをよく守っていたのです。

そんなある日のこと、宮殿警護の当直に当たっていたモルデカイは、たまたま、城門の警備についている後宮の役人ビグタンとテレシュが、王への復讐として暗殺を企んでいることを知ったのです。 ぐずぐずしてはいられません。モルデカイは、さっそく王妃エステルに通報しました。エステルはすぐさまこれを王の耳に入れ、これを知らせてきたのがモルデカイであることも忘れずにつけ加えました。 取り調べの結果、ゆるがぬ証拠が上がり、二人ははりつけになりました。この件に関しては、アハシュエロス王の年代記にくわしく記されました。

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エステル 記 3

ハマンの企み

その後まもなくして王は、アガグ人ハメダタの子ハマンを総理大臣に抜擢しました。今やハマンは、国王に次ぐ実力者でした。 ハマンに会うと、王の家臣はみな、うやうやしく頭を下げました。そうするようにとの王の命令だったのです。ところがモルデカイだけは、絶対に頭を下げようとしませんでした。

周囲の者たちは、来る日も来る日も、「どうして王の言いつけに背くのだ」と言いますが、それでも彼は頑として聞こうとしません。そこでついに人々は、モルデカイだけに勝手なまねをさせてはならないと、そのことをハマンに告げたのです。モルデカイは人々に、自分はユダヤ人だから別だと主張していたからです。 ハマンは怒りに駆られましたが、モルデカイ一人に手を下すだけではなく、この際、帝国中のユダヤ人を根絶やしにしてやろうと考えました。

その計画を決行する日は、くじで決めることにしました。アハシュエロス王の治世の第十二年の第一の月のことです。その結果、決行の日は第十二の月と決まりました。 こうしてハマンは、王に伺いを立てました。「この帝国のどの州にもくまなく入り込んでいる、ある民族をご存じでしょうか」と、彼は切り出しました。「彼らの法律は、どの国のものとも違っておりまして、そのために陛下の命令に従おうともいたしません。これ以上彼らを生かしておいては、陛下のためになりません。 もしよろしければ、彼らを抹殺せよとの勅令を出していただけませんか。必要な費用につきましては、私が銀一万タラントを国庫に納めさせていただきます。」 王は同意し、考えの変わらないしるしにと、指輪をはずしてハマンに渡しました。 「金の心配はいらない。とにかくおまえの考えどおりにやってよい。」

二、三週間後、ハマンは王の書記官を呼び集め、帝国内の総督や役人あてに手紙を書かせました。州ごとに、それぞれの言語や方言で書かれ、一通ごとにアハシュエロス王の署名と、王の指輪の印が押されます。 手紙は急使を立てて、全州に送り届けられました。手紙の内容は、ユダヤ人は老若男女を問わず、第十二の月の十三日を期して皆殺しにすべきこと、彼らの財産は手を下した者が取ってよいことなどでした。 そのあとに、「この勅令の写しをとり、各州の法令として公示し、全国民に通達すべきこと。各人は、決行当日のため準備をしておくこと」と書き添えてありました。 勅令は、まずシュシャンの都で発令されたのち、至急便で各地方へ送られました。都が騒然とし始めたころ、王とハマンは酒をくみ交わし、上機嫌になっていました。

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エステル 記 4

エステルの協力を求めるモルデカイ

事のいきさつを知ったモルデカイは、あまりのことに着物を裂き、荒布をまとい、灰をかぶって嘆き悲しみました。それから、大声で泣きながら町へ出て行ったのです。 彼は城門の外に立ちました。荒布を着たままで城内に入ることは、誰ひとり許されていなかったからです。 どの州でも、ユダヤ人の間に、すさまじい嘆きの声が起こりました。王の勅令を聞いて生きる望みを失い、断食して泣き、大部分の人が荒布をまとって、灰の上に座り込みました。

モルデカイの様子は、侍女や後宮の役人の口を通してエステルの耳にも達しました。彼女は心配で居ても立ってもいられず、着物を送って、荒布を脱ぐようにと伝えましたが、彼は受け取ろうとしません。 そこでエステルは、自分に仕えてくれる役人ハタクを呼び寄せ、モルデカイのもとへ行って、なぜそのようなことをしているのか聞きただしてほしい、と命じたのです。 ハタクは町の広場に出て、城門のそばにいるモルデカイを見つけました。 モルデカイの話から、いっさいの事情がはっきりしました。ハマンが、ユダヤ人を殺すためには銀一万タラントを国庫に納めてもよい、とまで言ったというのです。 モルデカイは、ユダヤ人殺しを命じる勅令の写しを渡し、エステルに見せてほしいと頼みました。そして、エステル自ら王の前に出て、同胞のために命乞いをするようにとことづけたのです。 ハタクはそのとおりエステルに伝えました。 エステルは困りました。どうしたらよいのでしょう。そこでもう一度、ハタクをモルデカイのもとへ送って、こう伝えさせました。 「この国ではだれでも、呼ばれてもないのに王宮の内庭に入ったりすれば、男でも女でも打ち首です。王がその者に金の笏を伸べてくださればいのちは助かるのですが。もう一か月も、陛下は私を召してくださっていないのです。」

ハタクはエステルの苦しい心中を告げました。 しかし、モルデカイの答えはきびしいものでした。「ユダヤ人が全員殺されるというのに、王宮にいるからといって、おまえだけが助かるとでも思うのか。 もしも、この事態をおまえがそしらぬ顔で見ているなら、神様は別の人を用いてユダヤ人をお救いになるだろう。だが、おまえとおまえの一族は必ず滅びることになるのだ。神様がおまえを王妃となさったのは、もしかすると、この時のためかもしれない。」

すると折り返し、エステルからの返事が届きました。 「シュシャンにいるユダヤ人を全員集め、私のために断食させてください。三日間、昼も夜も、飲み食いしないでください。私も侍女も断食しますから。そのあと、国禁を犯してでも陛下にお目にかかるつもりです。そのために死ななければならないのでしたら、いさぎよく死にましょう。」

モルデカイはエステルの言うとおりにしました。

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エステル 記 5

王への嘆願

三日後、エステルは王妃の衣装をまとい、王宮の内庭に足を踏み入れました。その向こうには謁見の間が続き、王は王座に着いていました。 王がふと見ると、王妃エステルが内庭に立っています。王は、「よく来た」と言わんばかりに、金の笏を差し伸べました。エステルは進み出て、笏の先にさわりました。 「どうした、エステル。何か願い事でもあるのか。申してみよ。たとえ帝国の半分でも、おまえになら与えよう。」 「もし陛下さえよろしければ、今日陛下のために宴を催したいと存じます。どうかハマン様とごいっしょにお越しください。」エステルは、かしこまって答えました。 それを聞いて王は側近を振り返り、「ハマンに、急いで来るよう申せ!」と命じました。こうして王とハマンは、エステルの宴会に招かれることになったのです。

酒がふるまわれる時になって、王はエステルに尋ねました。「さあ、どうしてほしいのか申すがよい。たとえ国の半分でもおまえに与えよう。」 「お願いでございます、陛下。もし陛下が私を愛し、お心にかけてくださいますなら、どうか明日も、ハマン様を連れてお越しください。明日の夜、何もかも申し上げたいと存じます。」

ハマンの怒り

宴会のあと、ハマンは天にも昇る思いでした。ところが、門のそばまで来ると、またあの無礼なモルデカイがいます。例によって、ハマンを見ても起立しようとしません。怒りがこみ上げてきましたが、 ここで腹を立てては元も子もありません。ハマンはそんな気持ちを抑えて家に戻り、友人や妻ゼレシュを呼び集めました。 彼らに自慢話をするためでした。ハマンは自分が財産家であること、子宝に恵まれていること、異例の昇進をしたこと、この国で王に次ぐ権力を握っているのは自分であることなどを得々と語り始めました。

場が盛り上がってきたところで、ハマンは取っておきの話だとばかりに得意気に語りました。「実は、エステル王妃の宴に招かれたのは、陛下と私の二人だけだった。そればかりか、明日もまた、陛下と二人でご招待を受けているのだ。 だが、それにしても……」と、彼は急に口ごもりました。「小憎らしいのは、あのユダヤ人のモルデカイだ。城門の前に座り込んだまま、私を見てもそしらぬ顔をしている。全くあの男のおかげで、せっかくの喜びも吹き飛んでしまった。」

すると、ゼレシュや友人たちは、口をそろえて言いました。「だったら、こうすればいいでしょう。うんと高い絞首台を作るのです。五十キュビト(約二十五メートル)もあるのを。明日の朝にも、陛下に願い出て、モルデカイをつるしてやるのです。すっきりした気分で、陛下と宴会においでになれますよ。」なんとうまい考えだろう。ハマンは大いに乗り気になって、すぐさま絞首台を作らせました。

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